May 16, 2006

残像

くねくね科学探検日記 - 再録・メディアはメッセージなんだよほほん
人間に備わっているコミニュケーション手段の中で、もっとも基本的で素直なものは、対話だよね。ようするに、面と向かってお話をするってやつだ。
この場合は、視覚で相手を見ていると同時に、声を聞いている。また、相手が側にいるというライブ感覚もある。場合によっては、ポンなんて肩をたたいたり、そっとだき寄せたり、その他モロモロの肉体的な接触もあるかもしれない。……といったぐあいに、対話は相手に与えあう情報量がもっとも多くなるコミニュケーション手段だ。

懐かしいなあ…と云っては、鹿野さんに失礼かもしれないんだけど(笑)、オールザットウルトラ科学は、十代の頃の僕の、それこそ愛読書だった。
SFにおける科学の面白さを、こんなに簡単明快に伝えた本は、他にないと思う。
「ノンバーバル(非言語)・コミュニケーション」という言葉を覚えたのも、この本でだったしね。
この本は、もっと簡単に手に入るようになって欲しいと思うのだけれど、ここでは、それはさておき。


その後、僕は、ゲイとしてデビューすることになる訳ですが、ゲイの世界ほど、「ノンバーバル・コミュニケーション」という言葉が重要な世界もないと思う。

誰かが飲み屋に入ってきたときの、皆の振り向くさま。
一見さんの自己紹介と、相手の手の内を探るような会話。
客同士の会話の隙間に、言外に交わされる視線。
狭い店で、トイレに立ったときに、自然と触れるタッチ。

そういや先週末から、福岡の一部の飲み屋で話のタネになってたのが、発展サウナ(ゲイが内輪で勝手にそう思い込んでるだけで、普通の銭湯なんだけどさw)で警察沙汰になったという話。
莫迦なホモが、ノンケさんに手を出したらしい。

大勢は「普通のホモなら、気のないノンケだってわかるだろうにねえ」という意見。
こっちの世界に慣れてない人だったのかな、それとも相当飢えてた(笑)のか。

そういう僕も、そろそろこっちの世界のしきたりがようやくわかってきて。
スーパー銭湯好きのゲイは多いけど、風呂屋はもちろん、その辺で偶然出会っても、相手がホモかどうかは、一発でわかるようになっちった(笑)

まずは服装。
そしてしぐさ。
視線。

街で出会うのは一瞬だから、「お仲間かどうか」しかわからないけれど、飲み屋だと共有する時間が違うから、相手が気があるかどうかも、すぐわかる。*1
そのコミュニケーションは、まったく言葉に寄らない。
これこそが「ノンバーバル(非言語)・コミュニケーション」と云うんだと思った。

この世界に入った当初、それは物凄く不思議なやりとりだったんだけど、でも、どっかで見た、どっかで聞いたことがあるというデジャヴュにかられて、なんとも変に気持ち悪い感じだったなあ。
てか、僕が感じたデジャヴュは、実は、ジョン・ヴァーリィの残像によるものだったと後に気付いて、大笑いしてしまったんだけど。


1978年のネビュラ賞、ヒューゴー賞、ローカス賞を総ナメにしたSF史に残る傑作、「残像」/"The Persistence of Vision"は、医療過誤によって視覚と聴覚を失った人々の、その後を描いた話。
人々は、誰もおとずれないような不毛の地に自分たちだけのコミュニティを作って暮らしていくのだけれど、それでも、独自の意思伝達手段を作り出し、それを用いて話をし、笑い、泣き、そして、愛し合う。
偶然、そのコミュニティをおとずれた健常者である主人公は、彼らの、その意思伝達手段(それは握手や抱擁のような触覚によるコミュニケーションで、作中では「タッチ」と呼ばれている)を知り、その表現の豊かさに驚き、それを学ぼうとする…


ごめん。
僕の、こんな下手糞なあらすじ紹介よりも、実際に本を読んでもらう方が絶対にいい(笑)
でも、『残像』と、その作者であるヴァーリィのエッセンスを、いくらかでも感じてもらうには、またまたですがWebにアップされた、大野万紀による『残像』の解説を挙げておく。

『残像』解説
http://www.asahi-net.or.jp/~li7m-oon/doc/kaisetu/Zanzo.htm


ようするに、ぼくたちはあるメディアを使おうとするときに、無意識のうちに、そのメディアの表現を受け入れるに最適な精神状態に変わってしまうのだ。つまり、何かメッセージを伝えるばあい、送り手の精神も、受けての精神も、なんらかの形でメディアの影響をうけ、結果としてメッセージの内容にもなにがしかの影響があるというわけだ。

『残像』に出てくる目と耳を失った人々と同じように、僕らゲイは言葉によらない手段でもって気持ちを伝え合う。
それはもちろん言語よりも未分化で、非論理的で…つまりは感情でしかない。

でも、何の気なしに触った、"あなた"の手のそのぬくもりは、とっても穏やかで優しくて、その感覚を忘れることなんか、僕には絶対に出来ないよ。





*1 あ。このblogの主要読者であるお仲間さんには、いまさらの話だというのは重々承知なんだけど、一応、開いたインターネッツ(笑)ということで…

daddyscar at 04:41   このエントリーを含むはてなブックマーク   この記事をクリップ! Comments(0)TrackBack(0)one of those gay days |   and others Edit

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紹介するほど
自己確立してないし
まあ、ただの日記なんだけど
それでだけ終わるのも
能がないっていうか
パラノ体質が許さないってか

で、一応ゲイなんですが
それに限らず色々書いてきます
でも、やっぱゲイであることから
離れることは出来ないかも



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