April 18, 2005

砂糖菓子の弾丸は撃ちぬけない


砂糖菓子の弾丸は撃ちぬけない

ライトノベル☆めった斬り!を読んだときに、色々ラノベについて調べてて、この小説を発見したんだっけか。

出版元が富士見ミステリ文庫となってますが、驚天動地のトリックなんぞありません(ちょっとした小ネタはあるけどね)。
それよりもなによりも、この小説がこんなにもイノセントなことに驚き。これは、自然に発露したものか、それとも作者の計算によるものなのか。
誰もが昔は感じたであろう、"なにものか"に対する不安が、ここには、こんなにはっきりと描かれてる。

なんて言葉に、あんまり意味はないね。どうしても軽くなってしまう。これを読んで抱いた感情を、上手く説明する言葉を、僕は持ってない。
だからと云って、気安く「オススメ!」と云う気にもなれないんだけれども。


内容は、リンク先のAmazonのレビューにてご確認を。ラノベでもセカイ系でもキミとボク派でもなんでもいいけれど、十代ティーンの子たちには、物凄くアクセスするだろうな、とは思う。
そこに、訳知り顔で、30過ぎのオヤジが入り込んで、色々と講釈たれりゃ、そりゃ怒るわな。いや、ゴメンね。


でも、若い子に限らず、悩みは色々とあるんだよ。てか僕にはあるし(笑)

たとえば、僕らみたいな未婚のゲイは、社会的な寄る辺が少ないから、常にアイデンティティの危機に見舞われている、というのは、サイトブログさんとか、玉野シンジケートさんで取り上げられてた話ですが、社会生活って、そういう面では一種の安全弁なんだろうね。
「Quo Vadis?」なんて、毎日考えてたら、気が狂ってしまうもの。社会生活に磨耗することによって、そんなことを考えないようにさせてる、というか。
本末転倒ですか(笑)



そこからの無責任な連想で、ディックを思い出したりしました。フィリップ・K・ディック。のろま。
ディックこそ、そのイノセンスを忘れぬままに人生を過ごした人でしょう。
ディックがもし、普通の人々のように社会生活に磨耗していれば、もっと凄いSFを書いたかもしれない。それこそレムが絶賛するようなね。
でも、ディックは、忘れなかった。忘れなかったけれど、その代わり、黒髪の女と何度も結婚したし、薬キメまくって、まわりの友達が死にまくった。
そんなにまでして、それでも忘れることが出来なかったものが、ディック自身をしあわせにしてくれたかどうかわからないけれど、ディックの作品の魅力とは、実はSFとはあんまり関係がなくて、ディックが忘れることの出来なかった"無邪気さ"と、その裏返しである"恐れ"にある。
なにものかに対する"恐れ"。何かが道をやってくる。



ゲイ同士がカップルになること、あるいはそれに付随するセックスは、未だ社会に認められてない訳ですが、そうすると、社会的な認知というカスガイがない分、それを自分たちで強固なものにしていかないと、すぐ崩壊してしまう筈ですよね。だって、社会的には、斥力しか働いていないんだし。
となると、それを強固にする手段として、セックスがより近しいのでは(ノンケよりもね)、ということを最近思います。
だって、男と女が付き合うときに、初めて会った人に「タイプです」とかって云わないでしょ普通。
「タイプです」という言葉の先にセックスがあることは、いわずもがな(というか「やらないか?」というか)。

社会生活が「Quo Vadis?」と考えることを磨耗させる、というなら、その逆ももちろん成り立つ筈です。「Quo Vadis?」と考えることは、社会生活を磨耗させる。どこに軸足を置くかの違いでしかありません。
もちろんゲイといえど、毎日「Quo Vadis?」と悩んでいる訳でもないし、普通に社会生活を営んでいるんですが、それでも社会的な斥力を受ける、ゲイであること自体が、社会生活を磨耗させるのではないか…

って、なんだか、いつの間に当たり前の結論に至ってるような(笑) 失敬。



『砂糖菓子の弾丸は撃ちぬけない』に、ちょっとアテられてるかな(笑)
daddyscar at 17:07   このエントリーを含むはてなブックマーク   この記事をクリップ! Comments(6)TrackBack(1)literature  Edit

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1. 人生とは49%の運と51%の可能性である。  [ つれづれ読書日記 ]   April 18, 2005 18:38
さて、ミゲールって誰だったっけ? とか言ってみる第84回は、 タイトル:砂糖菓子の弾丸は撃ちぬけない 著者:桜庭一樹 文庫名:富士見ミステリー文庫 であります。 児童虐待を扱った作品。 と、最初に危険信号みたいなものを出しておく。 ええっと、個人的には非常

この記事へのコメント

1. Posted by SEN   April 18, 2005 18:36
お邪魔しまーす。
トラックバックありがとうございました。
こちらもトラックバックさせて頂いております。

なんでこれ富士見ミステリ文庫なんでしょうね? 不明のままです。
十代の頃に読んでたら印象違ってたんだろうけど、三十路越えた身としてはアレコレ細かいこと考えてしまいました。

本作の主人公にしてもそうですけど、現代人はアイデンティティを保つのに苦労してますね。性嗜好に関わらず、セックスで自分や他人の存在を認識したいと願う人は多いのではないかと感じます。
2. Posted by 荒堀秋人   April 18, 2005 22:43
TBありがとうございます。

どうしても敵わない。
戦うこと自体が、敵が大きすぎて無謀な
そんな敵と戦っていた時代は、確かにあったのかも知れないな、と思います

今の私の敵は、主に目に見え、直接的な恐怖が降りかかってきますが
人生経験の少なく、実弾を殆ど撃てない私は
未だ、へっぽこな弾丸を撃ち続けています。

目指すは、
『砂糖菓子の弾丸で、撃ちぬけ!』
ですかねw

しかし、ミステリー文庫で出ているのは
確かに謎ですよね。
人魚がミステリーのネタだとか?

そっちの方がよっぽどミステリー。
3. Posted by 風隣   April 19, 2005 12:47
トラックバックありがとうございます

富士見ミステリー文庫は名前だけですよ
「ROOM No.1301」などまるでミステリー要素がないのもありますし
この作品はまだいくつか謎がある時点でよいほうかもしれません
4. Posted by daddyscar   April 19, 2005 13:51
皆さま、TB&コメントありがとうございます。

>SENさま。
10代の頃に読んだら、もっと強烈だったかもしれませんね。
そういう面では、「作者の計算に上手くノセられたか?」という気が、しないでもありません。

セックスと、それに附随する恋愛(どっちが主、とは思わないんですが)というのは、他者との究極の関係ではないですか。
それは巡り巡って自己への深い認識につながる…かなあと思いつつ、未だ色々な面で、発展途上なんですが(笑)
5. Posted by daddyscar   April 19, 2005 14:05
>荒堀さま。
僕は10代の頃、"敵"とは認識していませんでした。
無闇な全能感だけがありましたね。
夜神月じゃありませんが、「そのうち、おまえらすべて支配してやるぞ」みたいな(笑)
それがいつの間にやら、普通のおやぢに成り下がった訳ですが、「嗚呼、自分は、その辺にいる普通の人間と、まったく変わらないんだ…」と天啓のようにして気づいたときには、ショックではありましたが、逆に楽になりました。
そのとき、ようやく自分をありのままに、受け入れられたのかな、と思います。
だからといって、その前と後で、自分が変わった訳でもないですしね。
好きなものは好き。嫌いなものは嫌い。したいことはしたいし(笑)

と、ウザい"自分語り"をしてしまったことを、どうかお許しくださいませm( _ _ )m
6. Posted by daddyscar   April 19, 2005 15:08
>風隣さま。
富士見ミステリー文庫(「ミステリ文庫」じゃなかったですね。失敬)と銘打っていながら、ミステリっぽくないというのも、面白いですね。
そういえば以前、『ライトノベル☆めった斬り』の評判を調べてたとき、同文庫に、凄く思い入れのある方がいらっしゃったのを、覚えています。

『ROOM No.1301』Amazonのレビューを覗いてみましたが、仲々面白そう。
そういう雑然としたところから、新しい何かが生まれるのかな…なんてことを云うと、綺麗にまとめ過ぎですが(笑)、でも、なんとなく新本格が生まれたころを思い出したりして。

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紹介するほど
自己確立してないし
まあ、ただの日記なんだけど
それでだけ終わるのも
能がないっていうか
パラノ体質が許さないってか

で、一応ゲイなんですが
それに限らず色々書いてきます
でも、やっぱゲイであることから
離れることは出来ないかも



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