February 14, 2005

たとえ世界を失っても

GBrを通してご覧いただいてる皆さんはよくご存知でしようが、ぼせwebさんで、[同性が好きかもしれないキミへ]プロジェクトというのをやってまして、その第7回のテーマが、

  【ゲイ・レズビアンにおすすめの映画・小説・漫画etc】

とのことなので、これはトラバせずにはいられますまい(笑)



と云っても、僕が「これは挙げたい!」と思うのは、短編SFのアンソロジーに収録されている一篇の小説のみ。


20世紀SF〈2〉1950年代―初めの終わり

河出文庫から出てるSFアンソロジー『20世紀SF(全6巻)』の第2巻なんですが、この中に、シオドア・スタージョンという作家の『たとえ世界を失っても』/"The World Well Lost"という作品が収録されています。

スタージョンについて説明し始めるとキリがないので、ウィキペディア(Wikipedia)を張ってお茶濁し(笑)(こちらをご覧ください)
リンク先の紹介はよくまとまっていますが、ちょっとだけ付記しますと、代表作とされる短編集『一角獣・多角獣』/"E Pluribus Unicorn"が長らく絶版状態で(ヤフオクでいくらの値がついてたことか)、若い読者にとっては全貌がつかみづらい作家でした。
しかし、共に熱狂的なファンである翻訳家、大森望、若島正両氏の働きかけにより、去年より新訳版の発刊が相次ぎ、SF業界では一種スタージョン祭りの様相を示しておりました。



閑話休題。
上述のアンソロジーに収録されている『たとえ世界を失っても』は、SF小説としては初めてゲイを題材にした、と云われている作品です。
こちらによると、発表年は1953年とされていますが、フェミニズム運動の嚆矢となったボーヴォワールの『第二の性』が1948年発表ですから、その先進性は充分納得いただけると思います。


てか、アメリカSF界で初めて(ということは多分、大衆小説としても世界初)ゲイを題材にしたと云っても、そこはそれ50年代SFですから、小難しいことはまったくありません。
舞台こそ宇宙ですが科学的な厳密性もへったくれもなし(笑)、一種のサスペンス物でしかないので、SFにあまり触れたことがない方でもスラスラ読めると思います。

あらすじ紹介はネタバレになってしまうので、ご勘弁。ただし、ゲイ小説としても、ゲテモノじみたところは少しもありません。逆に、ゲイが題材であることを知らなければ、ゲイを描いた小説だと気づかない人もいるかもしれません。

それほど、この小説は自然です。
あまりに自然で、リアルな恋愛小説なので、「スタージョンって、ゲイだったんじゃないの?」と思ったこともありました(笑)



興味のある方は、ご一読を。
daddyscar at 03:17   このエントリーを含むはてなブックマーク   この記事をクリップ! Comments(9)TrackBack(2)SF  Edit

トラックバックURL

この記事へのトラックバック

1. 第8回の前に - [同性が好きかもしれないキミへ]  [ ぼせweb ]   March 02, 2005 23:34
同性好きかもプロジェクトの第7回を 【ゲイ・レズビアンにおすすめの映画・小説・漫画etc】 として、トラックバックを募集しまして、 今回もたくさんのトラックバックをいただきました。 ありがとうございます。 ...
[同性が好きかもしれないキミへ]プロジェクトを 昨年の8月から毎月一つずつ新テーマを追加するという形で、 これまでやってきまして、気がつけば半年も過ぎました。 トラックバックをくださったみなさん、ありがとうございます。 ...

この記事へのコメント

1. Posted by ys   February 15, 2005 01:38
はじめまして。ysと申します。
当方、SFからはかれこれ数年離れてしまっていたのですが、昨今のスタージョン再評価で久々にSFを読み返しつつあるところです。

上記作品、なかなかスタージョンらしい趣がありそうですね。
近々、手にして読んでみます。
わざわざ、トラックバックをありがとうございました。
2. Posted by daddyscar   February 15, 2005 09:59
ysさま、コメントありがとうございました。

僕も、上記アンソロジーによってSFの面白さを再認識し、ただいまリハビリ中です。

別の方のblogにもコメントさせていただいたのですが、以前はスタージョンの魅力がわからず、この作家は何がやりたいのかと頭を悩ませていていました。どこがこれほどの評価を生むのかと。
そのときたまたまSFMに再掲された『孤独の円盤』を読み、何かストンと組木が収まったような気がしました。

そのとき気づいたのは、スタージョンの魅力とは「ヒューマニズム」なのだ、ということなんですが、ただし、それは一般的云われている「ヒューマニズム」と微妙に違う(「じゃあその違いを述べよ」と問われると困ってしまうのですが)
そこがスタージョンの語りにくさなのでは、という気がします。

と思いつきをつらつらと並べましたが、これに懲りずにまたいらしてください。お待ちしています。
3. Posted by    February 15, 2005 14:02
 こんにちわ、daddyscarさん。
 トラックバックと「たとえ世界を失っても」のご紹介、ありがとう
ございました。このアンソロジー、さっそく探して読んでみます。
 私も、同じスタージョンの短編集「不思議のひと触れ」の感想をア
ップしましたので、またお時間のあるときにでもご覧になってくださ
い。
4. Posted by ごまち   February 16, 2005 01:02
 実はトラックバックってよくわからないのですが、ここにお返事をさしあげてよいのでしょうか。ありがとうございました。スタージョンは私の最愛の作家です。daddyscarさんのブログも興味深く読ませていただきます。
5. Posted by daddyscar   February 17, 2005 10:58
>るさま。

『不思議のひと触れ』の感想読みました。
『孤独の円盤』は、やはり何度読んでも心に響きます。この本は僕にとって、凄く大切な本になりました。

ちなみに翻訳家の大森望氏(http://www.ltokyo.com/ohmori/)によると、河出書房新社〈奇想コレクション〉より『輝く断片』と題された短編集の第二弾が4月頃刊行されるとのこと。
今回はミステリを中心としたラインナップになるそうです。
これも楽しみですね。


>ごまちさま。

はじめまして。コメントありがとうございます(そうです、ここでいいんですよ)。

スタージョンについては、以前は、『一角獣・多角獣』が入手困難だった所為で、「どんな作家なんだろう?」という興味の方が強かったのですが、新訳版刊行により、その全体像がわかるにつれ、重要な(というより「大切な」)作家になりました。
上述のとおり、今年も新訳短編集が刊行されるとのことですので、物凄く楽しみにしております。

本に限らず音楽や映画、そして個人的な日記と、雑多に書き散らしてますが、もしよろしければ、コメントなりなんなりで、またいらしてください。
お待ちしております。
6. Posted by kaxkengreeque   December 04, 2013 03:04
2 月にその日に歩いて目の開幕戦だった <a href=http://www.aso-hanabishi.com/blog/data/oakley1.php?product_id=212>オークリー メガネ</a>
それがメダルレースに勝ったプラダフォントフランスジョナサンLobertは、銅メダルを取ることができました <a href=http://www.netscs.co.jp/cgi-bin/scs-blog/01/data/oakley2.php?product_id=366>oakley シューズケース</a>
NPD DisplaySearchのはHIGHRES / HighPPIディスプレイの動向を明らかに <a href=http://www.aso-hanabishi.com/blog/data/oakley1.php?product_id=210>オークリー サングラス</a>
プラダメガネ男性屋外トレッキング毎週末のために行く、などしかし、あなたは快適性と安全性を提供していますペアに投資することを確認してください <a href=http://www.netscs.co.jp/cgi-bin/scs-blog/01/data/oakley2.php?product_id=248>オークリー ディーラー</a>
7. Posted by Nike Free Run Sale   April 05, 2014 23:07
Amazing weblog, I seriously apprecialte 1yard:たとえ世界を失っても the way you Nike Free Run Sale are sharing your opinions.
8. Posted by Karen Millen Dresses Outlet   April 07, 2014 12:58
They call this a paint by number system that begins with applying the primer, then three colors of paint Karen Millen Dresses Outlet are dabbed on with a sponge and finally the top-coat sealers are applied. The rollers, foam brushes and sponge applicators are all included in each kit. The 1yard:たとえ世界を失っても selections of kit patterns are named Roma Red, Sapphire Blue, Emerald Green, Chocolate Brown, Bombay Black and Sicilian Sand. It will take about four days to complete painting a kitchen or bathroom vanity Formica countertop.
9. Posted by Karen Millen Lace Embroidery   April 07, 2014 12:58
I used the West System epoxy resin with the fairing filler to repair the voids I found. Follow the Karen Millen Lace Embroidery directions provided to make the resin simple to use. Sandpaper them flat after the restored spots 1yard:たとえ世界を失っても have dried. Rinse the dust off with water.

この記事にコメントする

名前:
URL:
  情報を記憶: 評価: 顔   
 
 
 
Profile
daddyscar




紹介するほど
自己確立してないし
まあ、ただの日記なんだけど
それでだけ終わるのも
能がないっていうか
パラノ体質が許さないってか

で、一応ゲイなんですが
それに限らず色々書いてきます
でも、やっぱゲイであることから
離れることは出来ないかも



RSSを登録


Archives
Recommend

Mr.インクレディブル



Strangeways, Here We Come



伝奇集



ファントム・オブ・パラダイス



Watchmen



Mahler: Symphony No.9



デッドゾーン デラックス版



デビルマン (2)



The Stone Roses



IT〈1〉



Mixed Up



ブルーベルベット



半神



Slow Motion World of Snowpony



祈りの海



Loveless



ウィチャリー家の女



ティ-ンエイジャ-・オブ・ジ・イヤ-



戦闘妖精・雪風(改)



The Buried Life



密閉教室



Roxy Music



虚空の眼