February 12, 2005

遅まきながら『ライトノベル☆めった斬り!』

さて、『ライトノベル☆めった斬り!』ですが。

ネット上の評判を見るに、こんなに賛否両論だとは思いませんでした。
なるほどねえ。

まっさきに目に付くのは上のリンク先にあるAmazonのレビューでしょうか。
もう三人とも斬りまくってますな(笑)
あと、こちら(翠風)なんかも凄い(「w」とかつけたら刺されそう)。

僕はとっくにおやぢのSFファンだから、マナ板に乗せられてる古い本も知ってるし、面白く読んだけど、いま、リアルタイムでラノベ読んでる若い子たちは、「何云ってんの、このオジサンたち?」てな感じなのかも。
で、勝手にラノベの出自が, SF、しかもワケわかんない『超革中』とかにされてるし、怒るのも仕方ないのかな。
こちら(自由からの遁走)では、そのことを、「ライトノベルの読者層が読んでる気がしないもの(超革中)から起源を語るのと、それがライトノベルの読者と離れたところで正しい言説になってしまいそうな気がしたので感情的に反発して見せたのですが」と冷静に語ってますが、いや、その感情は正しいと思うよ。

大森望は基本的に面白主義の人なので、ラノベというジャンルに対して思い入れががないのかもね。しかも戦略的に「すべての道はSFに通ず」と公言しまくっているので。
てか、もう一度まえがき読み返してみたら、『ライトノベル三十余年の歴史を語るにあたっては、なるべく公平な見方を心がけたつもりだが、著者はふたりともSFファン出身だし、おたく文化にどっぷり浸かっているとはいえ重度の活字中毒者なので、「ジャンル小説寄り」のバイアスがかかっている可能性は否定できない。というか、本書とはまったく別のライトノベル史観も当然存在するだろう』とか、『なんでこんなものが?」と目を疑う作品が入ってたり、往年の大ヒット作が落ちたりしてますが、まあそこは著者たちのライトノベル観の反映ということで』なんて書いてあるじゃん。

おまいら釣られ過ぎ。



ただし「僕らが好きで読んでるものに対して、外野からゴチャゴチャ云われたくない」ってのは、感情としては正しくても、そこで自分たちなりのアクションを起こさないと、ラノベをただ消費することにしかならないと思う。ヒットしたら皆手に取るけど、流行が終わったら、ブックオフで105円とかで売ってたり。「そのとき面白ければいいんだよ!」なんて享楽的なのもアリだとは思うけど。
ジャンル意識を持たないと、そのジャンルは発展しない。で、ラノベは充分、いまひとつのジャンルとして成立していると思うけど、その外堀を埋めてるのは、やはり他のジャンル小説の作家や評論家であってさ(ライトノベル評論家なんていないもんな。いないよな。いたりしてw)、「まあ教科書だと思って読めよ」とまでは云わないけど、そこまで反発しなくてもいいんじゃ?とも思う。ラノベがジュブナイルSFをその起源とするのは、間違ってない訳だし。

翻って考えるに、これだけの賛否両論を引き出したということは、賛にしても否にしても、自身のライトノベル観を見直す契機にはなったと思うから、ライトノベルというものに対するジャンル意識をこの本は高めた訳で、そういう面では正しい?本ではなかったかと。
この本に反発した読者の中から、それこそ最初のライトノベル評論家が生まれたりして。


で、そんな大層な(でもないか)ことを云うお前の立場はどうなんじゃあ!と聞かれると、僕にとっては、若者向けのエンタテインメント小説でしかないっす。昔はヤングアダルト小説って呼んだり、ジュブナイル小説って呼んでた。呼称が変わっただけ。
ロックンローラーが初期衝動を失っても、次世代のヤツが「No future!」と叫んでロックンロールを再話したり、グランジなんて別の名前をつけて売ってたのと一緒。

ただし、当事者たちにとってはまったく違うものだった、というのも理解しているつもり。僕も昔はそんな感情をいだいたことがあったから。



蛇足。

エンタテインメント小説ということは、もっと起源を遡ると、そこには古典的な物語がある訳です。この本にあるライトノベル診断表(Web版はこちら)を見るとそれがよくわかる。
「両親のどちらかもしくは両方が不在」であるとか「特殊な境遇にある(生まれついた)」(あるいは「特殊能力を持つ」)なんてのは、貴種流離譚には付きものの主人公の"しるし"であって(「大量の妹がいる」wなんてのも、ヴァリエーションのひとつかな)、ラノベが、古典的な物語構造を持っていることを示している(この診断表を真とみなすならば、だけど)。
そんなことをつらつら考えていたら(ラノベと離れてしまうけれど)、純文学というのは、自分の特殊性を自分で探す(あるいは探した末に、そんなものは存在しないことを知る)小説群のことではないかと思いついたり。

あと、こちら(HentaiJapanimation4seasons)で、ライトノベルとゼラズニイの相似が語られているんですが、これも目ウロコだったなあ。
まだ滝川羊もセカチューの序文も読んでないんですが、そういやゼラズニイの主人公も、生まれながらの超人で、世界の滅亡よりも恋人を大切にする人たちではありました。
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1. ライトノベル☆めった斬り!  [ PukiWiki/TrackBack 0.1 ]   February 14, 2005 08:00
ライトノベル☆めった斬り!  【bk1】【blogmap】【はてな】 † 著者 大森望(おおもりのぞみ) 大森望のSFページ 三村美衣(みむらみい) 公式サイト ライトノベル☆めった斬り! Official Site ↑感想リンク † http://www.asahi-net.or.jp/~IH9K-YNMT...

この記事へのコメント

1. Posted by 若林@翠風   March 04, 2005 03:29
御紹介どうも。別にどういう批判を頂いても斬りはしませんが。私がこの本に「否」なのは真っ先に売り方です。「売ったもの勝ちとはいえ、これは……」ということですね。タイトルと装丁に偽りあり。そのあたりが明確でなかったことについては文章能力不足。

そして次に「文学賞」に比べてあまりにも落ちる内容。そのあたりにも認識のずれがありそうです。……統一する気もありませんが。

あの装丁に釣られた一人としては、「おまいら釣られ過ぎ」というのは厳しい一言ですね。所詮装丁に騙された者は文句言うな、注意力が足りない、という所ですか。

単純にツッコミに忙しく、私個人のライトノベル観については全く触れていませんね。「若者向けのエンタテインメント小説でしかない」にほぼ同意。「少年漫画」「少女漫画」と同レベルの概念。ジャンプやマガジンやなかよしをいい年の大人も読むように、ライトノベルもいい年の大人も読む。その程度。ただだからこそ、「いい年の大人が読むライトノベルブックガイド」であってほしかった。

新しく記事としてトラックバックするほどでもないので、コメントにて。
2. Posted by daddyscar   March 04, 2005 10:31
若林さま、コメントありがとうございます。
「あれれ、スルーですか?」と思ってましたから、正直うれしい(笑)
ご自分のblogに「立脚点が違いすぎて議論する意味はなさそうなのでこれで終了。」と書かれていますから、多分、このblogなんかもうご覧になってないでしょうが、それでも、一応反論を。

この本は、普通にラノベ読んでる人向けではなく、「ラノベって読んだことないけど、どういうの?」という人向けなのでは? 帯に「だからライトノベルってなによ?」と書いてありますし。
では、そういう本だとすると、ライトノベルを知らない人に対して、ライトノベルを説明するために、その歴史を語るという手法は正しいと思います。
また、途中に挟まれる作品毎の解説は、それだけで、充分ガイドブック足り得ているのでは。
「おまいら釣られ過ぎ」ってのは、イラストに対してではありませんが、イラストに関して云うと、「あんたイラストだけ見て買ったの?」と訊いてみたい。
中身は全然読まず、あのイラストだけで買って、「イラストと中身が全然違うじゃないか!」ってなら、「そりゃあんたの自己責任だよ」と云いたいですね。
イラスト(とタイトル)に関しては、そりゃもちろん売れるための戦略でしょ(笑) ポピュラリティは重要ですよ。
で、「釣られ過ぎ」の本来の意味ですが、まえがきに、これだけ、「本書とはまったく別のライトノベル史観も当然存在するだろう」とか、「まあそこは著者たちのライトノベル観の反映ということで」と書いてあるんだから、

・「少女小説家は死なない!」よっぽど好きなんだな。あれメタ小説だろ。
・「骨牌」読んだよ。好きなの分かったよ。でもライトノベルにかすりもしねえだろ。
・うわあ、「六番目の小夜子」までいるよ。
・結局これ、ファンタジー、SFまで含めた著者の好みじゃん。

なんてのは、言説として意味がないのでは、ということです。てかもっと冷静になれよって感じ。

とまあ、僕は割と大森望擁護派なので(笑)、それをして「立脚点が違う」というのは、同意ですね。
3. Posted by 若林   March 13, 2005 02:37
やたら間を空けてリプライ。
なるほど、確かに明確に立脚点が違いますね。

先にまとめると、このあたり全てがずれているようです。
・タイトル買いに対する認識
・本屋で実物をめくらずに買うことの是非
・大森望に対する期待する内容と期待値
(著者両氏の提示する30年史への満足度)

daddyscar氏:「帯で(もまえがきでもamazonでも)フォローされてるんだから騙された方が負け、そして内容も面白いと思う」

私:「タイトルと文学賞メッタ斬り!を考えたら内容は現在ライトノベルとして売られているレーベルの総括と個別の作品の評価であるべき。30年史をメインとしたこの内容なら『だからライトノベルってなによ?』は帯ではなくタイトルになるべき。そして内容もツッコミ所満載」

タイトルと中身の矛盾をどこまで許すか、帯でフォローされていればなんでもありか、ということですね。daddyscar氏のコメントを読む限り「買う前にまえがきまで確認しなかった方が悪い」とすら解釈可能です。『中身は全然読まず』とありますから、本気でそう思っているようですね。それこそ立脚点が違いすぎます。私はamazonでタイトルだけ見て書評も見ずにカートに放り込みましたから。

あと、タイトルと中身が違ったとして、それを許せるくらい面白かったか、という感覚のずれでしょう。そして私は基本的に「否」なんだけれど、最初からツッコミを入れるための本と理解していれば、まあこれもアリかな、というスタンス。

そして私の書いた文章について。所詮自分と、できれば読み手に楽しんでもらうためのツッコミですから、私の書いた箇条書きが言説などというものだとは思っていません。単に怒っているだけに見えたり、単に箇条書きがつまらないとすれば私の表現力不足。
叩くなら叩くで、もっと真剣に欠点を論じろ、とういことであればそれも同様にスタンスの違い。

今ここで内容について書けば、現在手元に本がないので思い出せる範囲で。結局ライトノベルは「ジャンル」でも「レーベル」でもない別の概念である、という提唱を冒頭でしておきながら、それが本文では「ライトノベル度」という指標でしか使われていない。そして、ライトノベル紹介本としては、ライトノベル度の低い作品が多すぎる。ということで、『途中に挟まれる作品毎の解説は、それだけで、充分ガイドブック足り得ているのでは』という見解には私は「否」です。
4. Posted by daddyscar   March 17, 2005 00:56
若林さま、再度のコメント、本当にありがとうございます。

立脚点が違う、というのは同意です。
それは各々の価値観の違いであって、それでかまわないと思う。
でも、やっぱどうしても、「タイトルと表紙に騙された!」ってのは、納得がいかないというか、いきたくないというか(笑)
しかしながらそれも、「価値観の違い」と云ってしまっていいんでしょう。
「騙された」という気持ちは、その本への不満が反映されているのでしょうから。あなたは面白くなかった。僕は面白かった。それでオケ。

ただそこで、こっちとしては「えー?、面白かったじゃーん」という疑問を持つ訳です。
で、その疑問を解消したいと思ったのですが…

何度も繰り返しますが、僕はこの本を、「ラノベ初心者に対して、ラノベという(得体の知れない)モノを紹介するための本」だと認識しました。だから、その中で、ウン十年前まで遡って歴史の話をされても、違和感はなかった。
あなたはそういう本だとは思わなかった(表紙とタイトルを見て)。それで、予想と違う内容だったから不満を表明した。
それはそれで良いのですが、じゃあそのことは、作者が「こういう本を作ろう」と志向し、作り上げた内容と、どう結びつくのか?
尻すぼみの感はいくらかありますが、ラノベに至るまでの、若者向けエンタテインメント小説の歴史を、あの本は上手くまとめていると思います。だから僕は、あの本を評価した。あなたは、そこを評価しないですか?
そういうことを評価せずに、「予想と違った。肩透かしを喰らわされた。だから、この本は面白くない」というのは、あまりに主観的過ぎるんじゃないかと。
どうもその辺が、ケーキを作ったのに「辛くないじゃんコレ」と云われてる(笑)、みたいな感じがするのですが、僕は。

詭弁のガイドラインみたいになってきましたが(笑)、もちろん、これもまた、僕の想像、僕の意見でしかない。あなたが「否」と云うのは、それはそれでオケ。

あと、今回いただいたコメントの、最後の段についてですが、ラノベが「ジャンルでもレーベルでもない」という提唱が"ライトノベル度"でしか示されていない、というのは、ラノベというのが、そういうボトムアップ式にしか捉えられない概念だ、ということじゃないですかね。SF/非SFやミステリ/非ミステリという対立項、あるいは、特定の出版形式に左右されない。
で、「ライトノベル紹介本としては、ライトノベル度の低い作品が多すぎる」というご意見についてですが、いやー、だから初心者に、いきなり「『撲殺天使ドクロちゃん』読んでみ」っつっても、引くだけですってば(笑) 初心者向けの本なんだから、最初は軽目でいかないと。
5. Posted by 若林   March 18, 2005 01:43
「タイトルに偽りあり」の罪の重さの違い。私は中に英単語集が書かれている程度に中身が間違っていると思った。その英単語集の出来はともかくそれは問題だ。だから大森望もamazonでもまえがきでも言い訳している。



そしてそれを許容した上で中身自体の問題をきちんと論じるには気力も意欲も足りない。端的に言えば、ライトノベル史に対する感覚が根本から違う。私の年齢とか読書歴とかそういう前提を抜きにしてごく簡単に。

漫画やアニメと小説から合成された「突然変異」としか言いようのない、まさしく「ライトノベル」という「ジャンル」である商品が発生したが、「レーベル」としての「ライトノベル」は決してそういう作品だけではなく、めった斬り言うところの「ライトノベル度」が低い作品、従来のストリームで語れる小説も含む、と。
しかしその「突然変異」した作品が、ベストセラーになった、という訳ではないまま、徐々に他の作品に影響を与えていき、ベストセラーが出た頃には「ライトノベル」という呼称は確立していた。

で、じゃあ「突然変異」した作品はどれよ? とか、そこまで徹底的に調べだすとそれは出版社に売り込む原稿になってしまう。そして今の時点で、3/4の私のコメントとは既にライトノベルの定義は変わっている。つまり「ライトノベルというジャンルは存在する」だ。書籍に文句を言いつつ私のライトノベル観はその程度に適当なのは確かだ。しかし、それを固めるのにあの本は参考にも何にもならない。それに、私は単に面白い本が読めれば良いのです!

あと。大森氏も三村氏もべつに「ドクロちゃん」を読んで欲しいとはかけらも思っていなくて、「これはレーベルは違うけどライトノベルと言われてもおかしくない作品ですよ」「これはライトノベルと呼ばれるレーベルだけどこれならついていけるよね」という作品、それと全てを無視して単なる好みの作品しか勧めていない。それを「初心者向けだからそれで良い」と思うかどうか。私に言わせれば単純に腰が引けている。



たぶん今の私から引き出せるのはここまでかな。何かつついてみたいようなことがあればここに追記があれば反応するかも知れないし、確実に意見が欲しければメールやはてなのコメントで連絡下さい。
6. Posted by Karen Millen USA   April 07, 2014 12:59
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紹介するほど
自己確立してないし
まあ、ただの日記なんだけど
それでだけ終わるのも
能がないっていうか
パラノ体質が許さないってか

で、一応ゲイなんですが
それに限らず色々書いてきます
でも、やっぱゲイであることから
離れることは出来ないかも



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